叶う。 Chapter2
案の定、その後のママはずっとご機嫌だった。
最初は色々と戸惑っていたみたいだけれど、やっぱり子供が素直に可愛く笑っているだけで、大人は簡単に騙される。
私はとにかくママにだけは嫌われる訳にはいかない。
あの暗く不潔な家からやっと開放されたのに、あの子はこんないい暮らしをずっと続けさせてもらっていた。
私はその間ずっとずっとまた暗いあの世界に閉じ込められ続けてきた。
一度だけ、あの子と入れ替わるチャンスはあったけれど、あの時はシオンに邪魔をされた事をふと思い出した。
だけれどもう安心だ。
あの子は居なくなってしまったし、ママは戸惑いながらも私をきちんと受け入れてくれる。
大丈夫、私ならあの子よりもずっと有意義にこの暮らしを利用できるし、もっともっと登りつめてみせる。
散々人を玩具にして、幼い私を性欲の対象にしてきたあの大人達にも復讐出来る。
残念ながら、あのヒステリー女は自分から死んでしまったから復讐する事は出来ないけれど、今度時間を作って墓参りに行ってあげようと思う。
そう考えただけで、私は背筋がぞくぞくとした。
鼻歌を歌いたい気分だったけれど、ママの運転する車は段々と速度を落として、ヘアサロンの近くの駐車場に停まった。