叶う。 Chapter2
私は無言で凛を見つめた。
暫くの沈黙の後、凛は深呼吸をしてゆっくりと話し出した。
「…私ね、かなうと会う前、学校で嫌がらせされてたの。」
「……うん。」
「それで、ね……正直うんざりしてて、ストレスも凄くて、夜遊びするようになったの。」
「うん。」
「最初はただ、夜中までクラブで遊んだり、適当に毎日過ごしてたんだけど……」
「うん、でも凛の親御さんは?」
話を中断させるのは気が引けたけれど、中学生の親が自分の娘がそんな行動をしてたら普通は諭すはずだし、気になったのでそう聞いた。
「……うちは、母親が私が3歳の頃出て行ったから居ないんだ。親父は滅多に家に帰って来ないよ。女が居るから。」
凛はそう言って、小さく溜め息を吐いた。
私は余計な事を聞いてしまった気がして、ほんの少しだけ凛に同情した。
あの広い家で独りぼっちの凛を想像して、何だかとても悲しい気持ちになった。
「だから普段は家に誰も居ないし、親父もたまに生きてるか見に帰って来るだけだから。でも、居ても迷惑だから居なくて良いんだけど。」
凛はそう言って、呆れた様に笑った。
「でも、そろそろ金持って来る時期だから、今日はかなうのおかげで、助かったよ。」
「……。」
「流石にこんな姿見られたら、何言われるか分かんないし。」
そう言って悲しそうに笑った凛は、何だかとっても寂しそうだった。