叶う。 Chapter2
「周りが、その声に脅えて居たの。空気が氷ったみたいに、樹ですら、見たこともないくらい狼狽えて、謝ってた。」
まぁ、シオンのその声音はなんとなく想像出来る。
私ですら、たまに恐怖に感じるのだから他人なら尚更だろう。
「……その日は、私は逃げ帰ったからその後は分からないけど、ただ次の日に樹に呼び出されて、別れたいって言ったら殴られて……ずっとそんなのが続いてて。」
凛はそう言って、また瞳一杯に涙を浮かべた。
「それで今日もかなうとメールした後、直ぐに家に来て、……親が帰って来るとまずいから、大人しく樹の家に行ったの……、そしたらアイツらが居て……」
その先は、聞かなくても良かった。
凛は可哀想だけれど、過ぎた事を引きずって時間を無駄にはしたくなかった。
だから私は凛にこう質問した。
「……それで、兄達はその場所で何をしていたの?」
「ごめん、それは分からないの。ただ、樹はかなうのお兄さんに酷く脅えてたから、だからてっきりかなうがお兄さんに何か言ってくれたのかと思ったの……」
凛はそう言って、またぽろぽろと涙を流した。
もう恐らく凛から聞き出せる事は何も無いだろうと判断した私は、未だに涙を流す凛をそっと抱き締めた。
「……辛かったね。でも大丈夫だよ。」
私がそう言うと、凛は途端に泣き崩れて私にしがみついた。