叶う。 Chapter2
"は?てめぇは何様のつもりだ!?"
あまりの煩い声に、私は耳から携帯を離した。
「仕方ないじゃない、別に行かないって言ってる訳じゃないし、何でそんなに怒ってるの?」
"てめぇが、約束守らねぇからだろうが‼"
「ちゃんと行くってば。だから、態々電話してるんじゃない。」
"今すぐ来いよ。"
「無理。それに、強引な男はタイプじゃないわ。」
私はわざと呆れた様にそう言った。
分析上、こういう我が強い俺様タイプほど、こっちが余裕を持って接した方が良い。
何故ならこういう男ほど支配欲の塊なので、相手が余裕がありそうな態度を取る事を望む。
その方が、手に入れた時に支配欲求が更に満たされるからだ。
その分析は多分、外れてないだろう。
案の定、樹は直ぐに態度を変えた。
"何時なら来れるんだ?"
声は相変わらず威圧的だけれど、この状況を楽しんでる事が分かる声音だった。
「とりあえず、家の用事が済んだら連絡するわ。どうせ朝までいるんでしょ?」
私がそう言うと、樹は楽しそうに笑った。
笑い声が物凄く不快だったけれど、その声が苦痛で満ちるのを想像して気分を落ち着けた。
"とりあえず、早く来いよ。"
「うん、ごめんね。」
私がしおらしくそう言うと、樹は何故か優しい声音で小さく"おぅ。"と返事をして電話を切った。