叶う。 Chapter2
「ありがと、かなう。」
凛はやっぱり食欲がなさそうだったけれど、スプーンを手に持ってぼーっとスープを眺めていた。
暫くそのまま眺めていると、少しずつだけれどスープを口へと運び出した。
「・・・美味しいね。かなう料理も出来るんだ?」
凛はそう言って、またスープを口にする。
「ママが夜居ないから、私が作ってるだけだよ。」
私はスープを口にする凛を眺めながら、優しく微笑んだ。
時刻はもう少しで22時になる時間だった。
この時間に帰宅しないという事は、多分兄達は夜中くらいに帰宅するはずだろうと、私は思った。
ということは、そろそろ出掛けないといけない時間かもしれない。
シオンとレオンと入れ違いになってしまう可能性もあるし、そうなると樹に何されるか分かったもんじゃない。
だけれどふと考えてみると、樹に“何”かされた方が都合が良いんじゃないか、と思った。
シオンを恐れているのが本当ならば、シオンの大事な私に何かあった方がシオンの怒りは恐ろしいものになるだろう。
身体は別に減るもんじゃないし、むしろ本気で怒ったシオンを見てみたい気がしてきた。
どんな風に怒るのか、自分自身で怒らせたいとは決して思わないけれど、他人を利用して怒ったシオンを見れるのは何だか少しだけ刺激的で面白そうだ。