叶う。 Chapter2
私はタートルネックの真っ赤なニットワンピースに着替えると、ラメの入った網タイツを履く。
とても目立つこの色を選んだのにはもちろん理由がある。
誰がどう見ても人目を引けば引くほど、兄達に耳に色々入る可能性があるからだ。
髪を手ぐしでわざと少しぼさぼさにして、メイクをしっかり直す。
凛はそんな私を驚いたようにちらちらと盗み見ていたけれど、私はそんな視線に気付かない振りをした。
凛が色々と私に秘密にしていたように、私も多少の秘密があっても今更不思議ではないだろうし、それを凛だっていちいち言ったりしてこないだろう。
だから多少の変化ならば、今の凛はさして気にもしないだろう。
「じゃあ、行ってくるね。」
私は鞄に適当に荷物を詰めると、ファーの白いコートで身を包んで凛にそう言って、何かを言われる前に部屋を出た。
私が部屋を出ると小さくカチャリと音がしたので、凛が鍵を閉めたことがわかった。
私はそれを確認すると、ゆっくりと玄関に向かった。
ワンピースとお揃いの真っ赤なピンヒールのパンプスを取り出して履くと、何時もよりも視界が高くなってなんだか気分が落ち着いた。
玄関を出るのは寒くて嫌だったけれど、私は仕方なく重いその扉を開けた。