叶う。 Chapter2
扉を開けると、直ぐに冷たい風が私の頬を掠める。
身を裂くような冷たい風にうんざりとして、小さく舌打ちした。
さっきから何故か心が落ち着かないのは、これから先の刺激的な出来事を考えているからなのか、それとも何か別の理由なのか自分でも分からない。
私は冷たさで指先が震えたけれど、樹から受け取った名刺を見て地図を確認する。
多分、場所はあの薄汚い裏通りのコンビニの近くだ。
あの日、シオンが私の邪魔をしたあの場所。
その記憶は鮮明に覚えている。
あの日邪魔されなければ、私の腕や指先はこんな傷だらけになる事もなかったのにと考えると、またシオンに腹が立って来る。
今更気にしても仕方ないけれど、何だか私はシオンの存在が気になって仕方ない。
それは多分、シオンだけが私という人格に気が付いているからだろうと思うけれど、それ以外の理由を考えても答えは出なかった。
そんなくだらない事を考える自分に余計苛立ちを感じながら、私は足早に目的の場所に向かった。
マンションを出ると、真っ直ぐにホテル街の方向へ歩き続ける。
背筋をきっちりと伸ばして、なるべく美しく見えるように意識して歩くのは結構神経を使う。
だけれど、こんな派手な格好で寒さに身を丸めて歩くのはとても格好悪いだろうし、何より自分の価値が下がって見えそうな気がして、すごく嫌だった。