叶う。 Chapter2
深夜に近い時間なのにも関わらず、裏通りは相変わらず若者が沢山居て賑わっている。
私は沢山の視線を浴びながら、真っ直ぐに目的の場所に向かう。
途中何人かにナンパされたけれど、今日の目的は別のところにあったので、優しく微笑んでさよならをした。
薄暗い通りにある唯一のコンビニに立ち寄ると、私は温かい飲み物とガムをレジに持って行った。
そして財布を出すついでに携帯も一緒に取り出した。
お会計を済ませるとコンビニを出て、そのまま携帯から樹に電話を掛けた。
樹は大層お待ちかねだったのか、2コールで電話に出た。
″随分と遅いじゃねぇか。″
出だしから不機嫌なその声音に、思わず笑ってしまいそうになる。
「仕方ないでしょ?今用事が済んだの。」
″つーか、用事って何だよ?″
「知りたい?」
私はそう言って、微かに笑ってみせた。
″だから、何だよ?″
樹はもう、私に興味津々な様子だったので、私は優しくその答えを教えてあげた。
「兄達の食事を作ってあげてたの。今近くのコンビニに居るんだけど、迎えに来てくれない?」
私はそう言って、心の中だけでクスっと笑った。
ほんの少しだけヒントをあげたけれど、馬鹿な樹は気付かないだろうと思うと、とても気分が良い。
″……待ってろ。″
樹はそれだけ言うと、電話を切った。
私はウキウキしながら、両手を温かいドリンクで温めて樹の到着を待った。