叶う。 Chapter2
樹は私の腰に腕を回すと、そのままホテル街の方向に向かおうとした。
私はその方向に全く興味がなかったので、立ち止まった。
樹はそんな私をまた睨みつけると、不機嫌そうにこう言った。
「何だよ?」
「もう、ホテル?そんなに飢えてるの?」
私はそう言って、優しく笑いかけた。
「……は?お前いちいちうぜぇな。黙って着いてこいよ。」
樹はそう言いながらも楽しそうだ。
「私ね、クラブって行ったことないの!」
「は?だから何だよ?」
「一人じゃ怖くて入れないから、樹に連れて行って欲しいなぁって思って。」
「……。」
樹はどうしようか迷っている様子だった。
まぁ、私としてはどちらでも結果は同じなので構わなかった。
私という存在に触れただけで、きっとコイツの運命は既に決まってる。
「……だめ?」
迷う樹に上目遣いでもう一度押してみる。
樹は暫く考える様子を見せて、私を爪先から頭の天辺まで値踏みするように見つめた後、こう言った。
「……お前、俺の女になるか?なるなら連れて行ってやる。」
樹はそう言って、不適に笑った。
「なっても良いよ。だけど、私のお兄ちゃんシスコンだからなぁ。」
「は?兄貴関係ないだろ?」
「うん、そうだね。」
私はそう言って、さっきよりも更に優しく微笑んでおいてあげた。
もう2度目のヒントを華麗にスルーした樹の馬鹿さ加減に私の心は爆笑しそうだった。