叶う。 Chapter2
クラブまでの道のりは薄暗くて、汚ならしい身なりをした若者が沢山居た。
樹と一緒だから、皆勝手に道を開けるけれど、一人なら絶対こんな場所に来たいと思わない。
兄達は良くこんな場所に来れるもんだとほんの少し疑問に思いながら、私は樹に腰を抱かれながら歩いた。
「つーか、お前ハーフなの?」
吐き捨てられたガムを避けて歩いて居ると、今更樹がそんな質問をしてきた。
「うん、ハーフだよ。」
「へぇ、どっちが外人?」
「ママ。父親は居ないよ。」
これ以上話し掛けられるのが嫌だったので、先に教えておいてあげた。
いくら無神経な樹でも、会って間もない私の家庭事情にそこまで首を突っ込んでは来ないだろう。
「ハーフの癖に貧乳だなw」
樹はそう言って、いきなり私の胸を鷲掴みにしたので、思わず殴ってしまいそうになった。
だけれど、私はなんとかそれを抑えて樹の手を優しく胸から離してそのまま自分の手と繋ぎ合わせた。
「人前でそう言う事しないで。」
私は少し俯いて、恥ずかしがっている振りをしておいた。
樹はそんな私に更にご機嫌になった。
そのご機嫌な顔が、恐怖で歪むのを見るのはさぞかし気分が良いものだろう。
私は俯いたまま、バレないようにニッコリと笑った。