叶う。 Chapter2



暫く薄暗い道が続いていたけれど、急に開けた場所に出たので私は顔を上げた。

そして、そこにある建物を見て一瞬驚いた。
こんな綺麗な建物だとは正直思ってもみなかったからだ。

その場所は私達が通った裏通りから来る道と、繁華街から繋がっている道の2つが丁度交差する場所に位置していたようだ。

繁華街から繋がる道は明るくて、裏通りから来る道と正反対なくらい人通りも多かった。
私はそれを知った途端、兄達がなぜこんな場所に来れるのか、瞬時に理解した。

クラブの入口には、厳つい男が二人ほど立って居た。
樹はどうやら顔見知りの様で、片手を軽く上げて挨拶を交わしてた。

どうやら一応警備をしているらしいその人達の後ろにある扉を開けて貰って中に入ると、直ぐに背後で扉が閉まった。

赤い絨毯が続く道の奥から、軽快な音楽が聞こえてくる。
楽しそうな男女の笑い声や、耳障りなほど煩い音楽に呆気にとられている間に、樹は入口にあるチケット売り場らしい場所で、勝手に料金を払ってくれた様子だった。

私は初めてのその場所に興味津々で、辺りをじっくりと観察した。

「ほら、無くすなよ。」

樹は私にそう言って、チケットを1枚渡してくれた。

「これ、無くしたらどうなるの?」

「飲み物買えなくなるし、見つかれば摘まみ出される。」


樹はそれだけ言うと、私の腰に腕を回して絨毯の道を真っ直ぐ進んだ。

段々と騒がしくなる音楽に、何だか気分が悪くなったけれど、突然目の前に現れた光景に私はとても驚いた。




< 87 / 458 >

この作品をシェア

pagetop