叶う。 Chapter2
樹の腕にしっかりと腕を絡めながら、私はその場所をじっと見つめた。
シオンかレオン、どちらかがあの場所に居るのだろうか?
そして、あの二人が何をしているのか、私は更に興味が湧いてくる。
「ねぇ、樹?」
「ん?」
「あの場所はなぁに?」
私は隣でお酒を飲んでる、ご機嫌な樹に然り気無くそう聞いた。
「VIPルームだ。限られた人間しか入れねぇ。」
得意気にそう言った樹に、わざとこう聞いた。
「そうなんだ?ひょっとして樹は入れちゃったりするの?」
私がそう言うと、樹は更に得意気にこう言った。
「用事があればな。」
「用事ってなぁに?」
「……お前が知らなくて良い事だ。」
樹は吐き捨てるようにそう言ったので、これ以上は何も教えてはくれないだろう。
なるほど、馬鹿な樹ですらもその事を隠すって事は、本当に知られちゃいけない事があるって事だ。
私は俄然、やる気になった。
折角、態々こんな場所まで足を運んだのに、不快な気分で帰る気は更々なかった。
「もう満足したか?そろそろ行くぞ。」
気が付くと、樹の飲んでいたグラスが空になっていた。
「ちょっと待って、兄にメールだけ入れておかないと。」
私は何でもない風にそう言って、携帯を取り出した。
「は?うぜぇ、兄貴だな。そんなにシスコンなのかよ、きめぇ。」
樹はそう言ったけれど、私がメールを打っている間はおとなしく待ってくれる気みたいだった。