叶う。 Chapter2
「今日はどんな風にする?」
店長さんは準備をしながら、優しく私に話し掛ける。
「ママと同じ髪の色にして下さい。」
「え?良いのかい?」
「うん、あの色が良いの。長さも20㎝くらい切りたいの。」
「……大丈夫なの?」
「うん、大丈夫だよ。」
「でも、お母さんに怒られない?」
「大丈夫だよ。さっきママが良いって言ったの聞いてなかった?」
私はそう言って、鏡越しに店長さんに笑いかけた。
「そうなの?なんかアンナちゃん雰囲気変わったね?彼氏でも出来ちゃった?」
少しおどけた風に、そんな事を聞かれたので私はこう答えた。
「うん。すっごく格好いい彼氏が出来たよ。」
「へぇ、そうなんだ。彼氏が羨ましいね、こんな可愛い彼女が居て。」
櫛で丁寧に私の髪を整えながら、店長さんはそんな話をした。
「だから、雰囲気が変わったんだね。じゃあ、彼氏がびっくりするくらい可愛くしちゃおうか。」
店長さんはそう言って、私の髪を切り始めた。
ばっさりと切られていく髪に、とても気分が良くなった。
暫く店長さんに色々と話し掛けられたけれど、会話をするのが面倒になった私は、鞄から携帯を取って貰う事にした。
昨日の記憶を思い出しながら、学校でのあの子の人間関係を整理し始めた。