叶う。 Chapter2
嗚呼、何て良い気分なんだろうか。
私は樹の腕にきっちり腕を絡ませて、螺旋階段をゆっくりと上がる。
きっと樹は何故、シオン達に呼ばれたかすらきっとまだはっきりと理解しては居ないだろう。
さっきから無言で、心ここに有らずといった面持ちでその階段を一歩ずつゆっくりと上がる。
階段を上がりきった私の視界に映ったのは、上座にある真っ赤なソファに座る、シオンの冷たい蒼い瞳だった。
その場所は黒檀のように真っ黒なガラステーブルが置かれていて、回りを囲うように真っ赤なソファが置かれていた。
何人か知らない男の人が居たけれど、私は真っ直ぐにシオンだけを見つめた。
その蒼い瞳が、微かに怒りを含んでいるのが分かったからだ。
「あーちゃん、何してんの?」
シオンの左側のソファに座っていたレオンが呆れたように私にそう問いかけた瞬間、まずいと思ったのか、樹は私の手を離した。
「うん?彼氏とデート!」
私がそう言うと、レオンは驚いたように目を見開いた。
シオンに至っては、誰かに苦い風邪薬を水無しで飲ませられたかのように眉間にシワを寄せて樹を睨んでる。
樹は漸く状況を理解したようで、顔面蒼白で見ているだけで面白かった。
私はそんな樹をほったらかしにして、真っ直ぐにシオンの傍に向かった。
シオンは近付いた私の腕を掴むと、自分の隣に座らせた。