叶う。 Chapter2




「ってか、樹も座れば?」


レオンが大して興味なさそうにそう言うと、樹は脅えた様子で空いているソファの端に座った。

その場の空気は外より寒いんじゃないかってくらい冷えきっていたけれど、私は一人シオンにぴったりとくっついてご機嫌だった。

私は回りの人達をじっくりと観察した。

多分、この場に居る全員がシオンとレオンよりも歳上だろう。

中でも、樹は一番若い。

それにスーツに身を包んだ、目付きの鋭い男は誰がどう見てもその辺のチンピラとは違う。
その人の横に居るのは、間違いなくその人の付人だし、雰囲気だけで充分裏の世界の住人なんだろうと思った。

もう一人は樹と似たような雰囲気の若者だけれど、多分こいつの方が賢いだろうと、見た目だけで分かった。

後一人、顔にまで刺青を入れたどう見てもマトモじゃない人種が一人居た。
私は怖かったので目を合わせるのを止めておいた。

私はシオンの肩にコテンと寄り添って、ご機嫌で成り行きを見守った。


「あのさぁ、何でお前らが付き合ってんの?そもそも樹、てめぇ女居ただろ?」


早速レオンから、樹に対する尋問が始まった。

私は普段の優しいレオンとかけ離れた、冷たく汚いその言葉に少しだけ驚いた。

いつも優しいレオンが、こういう風に怒ってるところを私は見たことがなかった。




< 92 / 458 >

この作品をシェア

pagetop