叶う。 Chapter2
「…いや、アイツとは別れました。」
樹は心底不安そうな表情で、そう言ってレオンを見た。
「ふーん、じゃあどこであーちゃんと知り合ったわけ?」
「……あーちゃんって……」
「俺の可愛い妹。」
レオンはそう言って、私の頭を撫でる。
だから、私はレオンににっこり笑いかけた。
「あのね、樹の彼女は私の友達だったの。」
全く答えようとしない樹に代わってレオンに教えてあげた。
樹の顔色が、更に悪くなった気がしたので、私は優しく笑いかけてあげた。
「で、何で付き合う事になったの?」
レオンは呆れたように、だけれど私に対してなので優しくそう声をかけた。
さぁ、ショータイムの始まりだ。
私は心の中で笑い出したい衝動を必死に抑えて冷静に言った。
「私の友達がね、樹達にレイプされてたの。だから、返してってお願いしたの。そしたら樹と付き合ったら返してくれるって言うから。」
私はそう言って、悲しそうに顔を歪めておいた。
途端にレオンの顔が見たこともないくらいに怒りに満ちたのを、私は見逃さなかった。
シオンは私の演技に気付いているからか、終止無言で樹を睨むだけだった。
レオンはきっと相当怒るはずだった。
なぜなら、私が過去にレイプされた事に対して一番怒っていたのはシオンよりもレオンだったのだから。