叶う。 Chapter2
今や樹は完全に脅えきっていた。
「ふーん、じゃあアンナは脅されて樹と付き合ったって事?」
私に優しく声を掛けるレオンにこっくりと頷く。
すると、驚いた事に樹はその場で地面に両足をついて土下座した。
「し、知らなかったんです‼まさか紫音さんと玲音さんに妹が居たなんて‼」
「で?知ってた知らないの問題じゃないよ。」
レオンの声が、まるでシオンみたいに冷たく吐き出されるのを耳にして、やっぱり双子なんだと思った。
「す、すみません、本当にすみません‼」
そう言って、頭を下げる樹を上からヒールで踏みつけたい衝動に駆られたけれど、私はシオンの指先を触りながらその衝動を落ち着かせた。
シオンの体温はなぜか私には丁度良い温度なので、触れているだけで安心する。
そんな自分の感情はとても不思議だけれど、何故か私はさっきからのイライラが治まっていた。
樹は地面に頭を擦りつけて、今や半泣きだった。
うわ言のようにすみませんと何度も繰り返し呟いて居たけれど、シオンの一言でそれは悲鳴へと変わった。
「どうします?」
スーツを着た男がシオンにそう尋ねると、シオンは相変わらず冷めた瞳で樹を見つめながらこう言った。
「もう処分しろ。」
シオンがそう言うと、樹は突然暴れだしたけれど、直ぐに何処から現れたのか、屈強な男達に取り押さえられた。
たった一言のその短い言葉に、私は全身が粟立つのを感じた。