夜空の琥珀
 
 う……何なんだ、この気まずさ。


 すっかり忘れてたけど、若葉くんと2人きりという状況。

 若葉くんはいつも通り笑ってるから、冗談だっていうことは一目瞭然なんだけど、私は違う。

 恥ずかしさのあまり、机に突っ伏してしまう。



「ずいぶんとお疲れですね?」


「今度行われる試合に向けての、連日の調整によってもたらされた疲労のせいです……」



 というのは嘘に決まっている。

 昨日あれだけ休養を取ったのに、何を言っているのだか。



「まさか、まだ調子が完全に戻ってないんじゃ……学校に来てもよかったの!?」


「だ、大丈夫! 私、回復が早いのがチャームポイントなの!」


「治りが早いのが長所なんて……いつ怪我や病気をしても平気みたいな言い方……」



 若葉くんの表情が明るくなるどころかどんどん暗くなっていく。

 もう頭を抱え込みたくて仕方ない。
 
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