夜空の琥珀
 
「そうだ紅林さん、ひとつ……いいかな」


「えと……何?」


「ほら、今朝言い合いしてた人がいるでしょう。確か」


「……ああ城ヶ崎? 彼、何か恨みでもあるの? ってくらいケンカふっかけてくるの。私、嫌われてるのかなーあははっ!」


「そうかな。仲が良さそうだったけど」


「えぇ! どこを見たらそうなるの?」


「自分の感情を他人にぶつけるっていうのは、なかなかできないことだよ。

 紅林さんは、なんだかんだで彼に心を許しているんじゃないかな」


「心を、許してる……」



 意識はしてなかったけど……話す機会は若葉くんの次に多いと思う。

 口が悪くても、よくよく考えれば乱暴をされたわけでもない。

 意外と律儀で親切な面は、ちらほら見え隠れしていたような。


 ……案外、悪い人ではないのかな。


 心の中でそう思っていたのだと気づかされる。

 けど、いきなり「仲良くしてください」とも言えないよね。
 
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