夜空の琥珀
 
 変な疲れが溜まりに溜まって、気分転換にと教室を後にした休み時間。


 とある少女を見つけて足を止めた。

「剣道場事件」のとき、城ヶ崎たちに囲まれていた子……赤い襟とリボンから察するに、1年生だ。


 だけど様子がおかしい。

 彼女は階段の脇にある掃除用具入れに張り付き、手を伸ばしている。

 小柄な彼女ではてっぺんには届かない。


 私は少女のところへ歩いて行くと、同じように手を伸ばした。

 少女が動揺した様子で振り返る。



(あ……怖がられてるの、忘れてた)



 だけど、ここでやめてしまうのは良心が許さない。


 伸ばした指先に神経を集中させる。

 少しだけ触れる布地。

 たぶんこれが、彼女の求めるもの。

 あと少し、あと少しなのに――
 


「これを取ればいいの?」
 
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