夜空の琥珀
 
 手を引っ込める。

 隣には、それを事もなげに取り上げる若葉くんがいた。


 手元へ視線を落とした表情が険しくなる。

 無言で差し出してくる彼からそれを受け取り、私も顔をしかめた。



「ご、ごめんなさい!」



 引ったくるようにそれを掴んだ少女が、抱え込み、俯いてしまう。

 まるで、見られまいとするように。

 でも、目にしてしまったものは見過ごせない。


 少女が手にしていたのは、学校指定のバッグ。

 それが、信じられないくらいボロボロになっていたのだ。

 いくら使い込んだって、そんな風になって卒業していく人は見たことがない。
 
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