夜空の琥珀
 
「そのバッグ、どうしたんだ。自分でやったわけじゃないだろう」



 訊ねるけれど、返ってくるのは怯えた表情だけ。

 そこではたと気づく。

 顔をしかめたままだった。



「大丈夫だから、話してごらん?」



 ぶっきらぼうで低い作り声じゃなく、素に近い高い声で。

 城ヶ崎にバレて、吹っ切れた部分があったのか……思ったんだ。

 今大事なのは、私の素顔がどうとかじゃなくて、この子が悲しそうな理由を知ることだって。



「よくあるんです。こういうこと……わたしは気が弱くて、口下手だから、誰かに相談もできなくて……」



 言葉の最後は、消えてなくなりそうなくらいか細い。
 
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