夜空の琥珀
 
「嘘だね」



 呟きが聞こえた。

 それがどういうことなのか理解する間もなく、私の身体は宙に浮く。


 全身が大きく傾いだ。

 目を見開く。


 ……しくじった。


 けれど、私の身体をぐいっと強い力がさらった。


 何が起こったのか、理解不能だった。



「気にする必要がないってくらい平気なら、どうして階段から落ちそうになるのかな」



 我に返る。

 確かに、目下には階段があった。

 踊り場までの高さを認識すると、ゾッとする。


 でも落ちなかった。

 若葉くんの腕が、私を引き寄せていたから。


 触れているのは腕だけじゃない。

 彼の体温が背中越しに伝わって、頭の中がオーバーヒートしてしまう。
 
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