夜空の琥珀
 
「若葉くん! 私は大丈夫だから、離して!」


「駄目。離したらまた逃げるでしょ」



 追い打ちをかけるように、私を抱き締める腕に力がこもる。



「……っ! ごめん若葉くん、私、もう逃げないから! お願いだから離してっ!」



 ほとんど悲鳴に似た声で訴えると、腕の力がゆるんだ。

 ホッとしたのも束の間。



「僕に触れられるの、嫌?」


「それはちが……」


「じゃあどうして逃げたの?」



 口ごもった私に、若葉くんは声を低くした。



「……言えないの?」



 どうしようもなくなって、俯く。

 反論できないのは、何か後ろめたいことがあるからではないか。

 ……そう責められた気がした。
 
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