夜空の琥珀
 
「……城ヶ崎、ありがとね」



 勇気を振り絞り、スタスタと廊下を行く背中に言葉をかける……と。



「はぁ? 突然何言ってやがる、気色悪!」



 振り返りざまに、こんなことを言われました。



「あ、ちょっとそれ失礼じゃない? せっかくお礼言ってるのに!」


「だから、何で俺が礼を言われなきゃなんねぇんだよ」


「その……若葉くんとずっと顔を合わせてるのが、ちょっと……だから城ヶ崎が来てくれて、助かったの! まさかこれが借り?」


「はぁ……お前の脳内は、物事が都合よく変換される仕組みになってるんだな」


「違うの?」


「ちげーよ。こんなショボイの、誰が返すか。借りはそれ相応のものを返す」


「借りたものはちゃんと返すって、よいこの十戒みたいだね」


「少しは黙れ。ったく危機意識がまるでなってない。いいか、俺は忠告をしに来てやってんだ」


「忠告?」



 首を傾げると、城ヶ崎の表情が真剣なものになる。
 
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