夜空の琥珀
「ミブロという男を知っているな?」
「なんでその名前を知って……っ!」
「ノンキなヤツ。ここら辺じゃ、知らねぇほうが珍しいっての」
呆れたように肩をすくめ、城ヶ崎は口を開く。
「以前、この光涼地区では縄張り争いが頻発していた。その不良共をたった1人で、一晩のうちにシメ上げた男の名がミブロ。
ヤツに挑もうとした者は何人もいたが、足取りすら掴めなかった。
素性を知ってるヤツなんていない。ただひとつわかるのは、ミブロは満月の夜にだけ現れるということ」
それなら私も耳に挟んだことがある。
冷酷非情、情け無用。
畏怖の念さえ感じさせる孤高の存在。
ウワサのミブロはみな一様に、私の知る彼とは別人だった。