夜空の琥珀
 
 私たちがやってきたのは屋上。

 いささか天気が良すぎるためか、この季節、私たち以外の姿はない。

 だからこそ、人目を気にせず話ができるようにこの場所を選んだのだ。

 昼食を摂るのに適当な場所へ腰を下ろし、単刀直入に話を切り出す。



「――僕が?」



 一通りの話を聞いた若葉くんは、予想外の話題に戸惑っているようだった。



「早くに気づけなくてごめん。私、若葉くんと話すことしか頭になくて……」



 このまま気づけなかったら相当なバカだった。

 若葉くんはどんどん身近な存在になっていったけど、私たちを取り巻く環境は何一つ変わっていないのだ。

 私の知らないところで彼が理不尽な思いをしていたら……それを考えると、自分の愚鈍さばかりが目につくようで、嫌になる。
 
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