夜空の琥珀
 
「わか……」


「本気で言ってるの? ふざけないでよ! そんなことできるわけがないじゃないか!」



 背中に走った痛みや、ものすごい剣幕で怒鳴りつけてくる若葉くんに、畏縮するしかない。


 長谷川先輩に向けられた厳しい声。

 それよりもすごいものが、今、私に向けられている。


 目の前にいる人物は、若葉くんではないようだった。


 怖くて身がすくむ。

 涙がじわりと浮かぶ。

 若葉くんの表情が、大きく歪む。



「……僕が今までどんな気持ちで紅林さんと一緒にいたのか、わかる?」



 心の内の何かを抑え込むように、彼は声を絞り出す。

 答えられなかった。

 それこそ、私が知りたかったこと。

 つまり、知らなかったことだ。
 
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