夜空の琥珀
 
「前に、憧れの人が助けに来てくれる夢を見たって言っていたよね。それは、ミブロのことだったって思ってもいいのかな。……全然、面白くなかったよ」



 静かだけど、その中に抑えきれない怒りが内包されている。

 私を閉じ込めた腕、その両拳が顔の横できつく握り締められた。



「その人も、同じかもしれない」



 こんな場所でこんな状況なのに、不敵な笑みが現れる。



「その人もほかの人と一緒なのかもしれないよ。紅林さんに辛い思いをさせて」


「ちょっと……!」


「だってそうでしょ。一番辛いときに傍にいてくれないんだよ。それで満月の夜に現れる最強の男? バカじゃないの。

 自分のせいで紅林さんが狙われているかもしれないっていうのに、姿も現さないで逃げ回ってばかり。そんな人のどこがいいの?」



 ……脳内の何かが、プツリと切れた。
 
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