夜空の琥珀
 
 消え入りそうな声でやっと口にすることができたのは、たったこれだけ。

 ひどいことを言った。だから顔を逸らした。


 痛いくらいの沈黙の後、若葉くんがゆっくりと身を引く。



「わかった」



 淡々とした声が、嫌でも耳に届く。

 今度は若葉くんが私の横をすり抜ける。

 表情が見えないから、余計に不安を増幅させる。



「今の僕を怖いと思ったなら、もう僕に関わらないほうがいい。そうしなければ……きっと後悔する」



 キィ、とドアの開く音がした。

 彼が去っていく。

 それがわかったのに、私は動くことができない。


 若葉くんは追いかけてくれたのに……私には彼を追いかける勇気が、なかった。
 
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