夜空の琥珀
 
 何を言われたのか、理解できなかった。

 ゆっくりと言葉が思考回路を通過し、やっと繋がる。



(長谷川先輩が、ミブロ……?)



 空耳だとするならタチが悪い。

 今まで憧れてきたもの、それが……こんなものだったなんて。

 信じられない……信じたくない。



「その気色悪い髪にはいい加減吐き気がしてたんだ。もう拝まなくて済むなぁ」



 愉悦に満ちた笑い声。


 信じ、られない……。


 3年前、私を助けてくれたのはなぜ?

 気持ち悪いと言うなら、どうして助けてくれたの?


 竹刀を持つ手が、ガタガタと震えを増した。


 怖い。……足が動かない。


 情けない。

 伊達に剣道をやっていないのだと、どの減らず口が言ったのか。

 私1人では、何もできないじゃない……。
 
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