夜空の琥珀
「おい、やれ」
「…………っ!」
声も表情もなく近づいてきた3人は、私の腕をひねり上げた。
その拍子に竹刀を取り落としてしまう。
手首に鈍い痛みを感じながら、ゆっくりと視線を上げる。
……私は今、空っぽだった。
衝撃、混乱、恐怖。
色んなものが混ざり合い、ぐるぐる回って境目がわからなくなって、考えるのもバカらしいと、糸がちぎれたように思考が途切れてしまった。
不服そうに近づいてきた長谷川先輩は、グッと私の髪を引っ張る。
「誰に向かってデカイ態度を取ってるのか、わかってんのか」
……そんなの、わかるわけない。
あの日、あの夜、私を助けてくれた人の強く優しい手が、今、私を貶めようとしている。
あの手のぬくもりは覚えているのに、背筋を這うのは強い嫌悪だけ。