夜空の琥珀
 
「……せ」



 腹が立った。



「――放せッ!」



 腹が立った。

 情けない自分に。



「コイツ……!」



 長谷川先輩や朝桐くんたち3人が手を離し、後方に飛びのく。

 すぐさま竹刀を拾い、睨みつけてくる長谷川先輩に向かって構える。



「やる気か? さすが血の気の多さはウワサ通りといったところか」



 交錯する視線。

 息を吐く。

 今どうしたいのか、それを考える。

 迷ったときに戻るところはいつも同じ。

 そう、お月さまのところ。


 懲りないな、と自分でも呆れる。

 でも深く信じてしまったものはそう簡単に絶やせやしない。


 あの声、背中、手。私が覚えているのはほんの少しだけ。

 でも、確かなことはある。
 
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