夜空の琥珀
逃げない
突然聞こえた声。
暗くてよく見えないはずなのに、その姿だけはすぐに捉えられる。
息を切らせ駆け寄ってきたのは、もう帰ったと思っていた、そこにいるはずのない人。
でも見間違えようがない――若葉くんだ。
顔を合わせるのが辛い……それでも視線をグッと上げる。
どうしても、言いたいことがあったから。
「若葉くんの…………バカ!」
「えっ!?」
若葉くんだけじゃない。
長谷川先輩、朝桐くん、日野くん、和久井くん、ここにいる全員が驚愕の表情を浮かべる。
「白々しいわね! なに驚いてるの!」
「ちょっと待って! そんなこと言ったらバレて……」
「そんなの、この際どうだっていいことだわ!」
湧き上がる心の内を、力の限り、怒りに任せてまくし立てる。