夜空の琥珀
「私……若葉くんに謝らなくちゃいけないことがある。だから、終わるまで待っててほしい」
正面へ向き直った私に、若葉くんが血相を変える。
「紅林さん、まさか……無茶だ!」
「若葉くんは手を出さないで! これは私の闘いなの!」
「そんなこと言ってる場合!? お願いだから早く逃げて!」
「ここで逃げたら、私が信じてきたものや、私を信じてくれたものを裏切ることになる! 私は、絶対に逃げないわ!」
「紅林さんっ!?」
じっと正面だけを見据える。
長谷川先輩は驚きに目を見開いていたが、やがてニヤリと笑みを浮かべる。
「何だ何だと思って見ていれば……ハッ! こりゃ傑作だなあ! 校内一の不良ともあろう者が、ただのチンケな女だったとは!」
長谷川先輩はあざ笑うけれど、バレてしまったこと、後悔などしていない。