夜空の琥珀
「紅林の後をついて回るしか能のない犬が、いい度胸じゃねえか」
「犬? なるほど、犬か」
おかしげに震えた一拍後、その声音は氷点下のものへとなり変わる。
「――その犬に食い殺されるのと、生き地獄を見るのとは、どちらがいいか選ばせてやる」
「なんだと……っ!」
鉄の廃材を握り締め突進してくる長谷川先輩を、若葉くんは実に落ち着いた様子で見つめていて。
「偉そうな口きくんじゃねえっ!」
鋼鉄が頭上に振りかざされたとき、その姿が消えた、ように見えた。
鉄は虚空を叩き、勢い余って体勢を崩した長谷川先輩の背後に、竹刀を振り上げた若葉くんがいた。
「胴ッ!」
鮮やかな一撃をまともに食らった長谷川先輩は、大きくよろける。