夜空の琥珀
 
「く……っそぉっ!」



 それでも体勢を立て直し、若葉くんに向かっていく。

 鉄と竹がぶつかり合った。


 拮抗する力。

 ぎしりと軋む竹刀。



「どんなにお前が強かろうが、所詮は竹だ。鉄に敵うわけがねぇ」


「若葉くん……!」


「大丈夫だ。何も心配することはない」



 顔を正面に向けたまま、若葉くんは口元を弓なりに曲げる。



「強がりを」



 せせら笑う長谷川先輩を前にして、彼は不敵な笑みを浮かべる。



「油断は禁物だぞ? ――竹はしなるからな!」



 フッと、若葉くんが力を抜く。



「何っ!?」



 力の均衡が崩れ、長谷川先輩が前のめりに倒れ込んでくる。

 その体重をも乗せた鉄の廃材は、大きく竹刀をしならせ、



「はぁっ!」



 弾性の力を利用して、若葉くんは力いっぱい竹刀を振り上げた。

 見事な裏払いが華麗に半月を描く。
 
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