夜空の琥珀
今度は体勢を立て直す隙を与えず、容赦ない一撃が繰り出された。
「小手ッ!」
暗がりにも関わらず、若葉くんの攻撃は正確に叩き込まれる。
手首を強打された長谷川先輩は、ついに鉄の廃材を取り落とした。
重い音を立て、地面に転がる鉄の棒。
それを見て、長谷川先輩の顔色も真っ青になった。
すっかり腰が抜けてへたり込んでいる。
「……な、何なんだお前は!」
錯乱しながら叫ぶ長谷川先輩を、若葉くんが冷たい目で見下ろす。
「ほう、俺を知らないと? それでよく人の名を語ったものだな」
若葉くんの琥珀の瞳が、長谷川先輩を完全に捉えた。
硬直した彼はやっと気づいたらしい。
若葉くんの瞳に。