夜空の琥珀
「お前らは、この子の気持ちを考えたことがあるか?
自分とは違う人格を作り上げられ、恐れられ、誰に相談することもできない。そのことがどんなに辛く苦しいことか、お前らにはわかるか?
周りがそう言っていたからとか、ふざけたことは抜かすなよ。正しいかどうかはテメェで判断することだろうが」
琥珀の瞳が、険しい色を帯びる。
「彼女は、お前らのように他人を見下す汚らしい心など欠片も持っちゃいない。純粋で、人を思いやる心に満ち溢れた優しい子だ。
優しいからこそ、独りで全部背負い込む。だから、俺が守ろうと決めた。
お前は、手を出してはいけないものに手を出してしまったな。弁解の余地は最早ない」
「な……ちょっと待ってくれ……」
「貴様のようなヤツに情けは無用。覚悟はいいな。――――面ッ!!」
高々と振り上げられた竹刀が、長谷川先輩の脳天を直撃する。
あの細腕から繰り出されたとは思えないような、すさまじい衝撃。
白目をむき、地面に倒れる長谷川先輩。
必殺の一撃に、見事撃沈した。