夜空の琥珀
 
 どれも信じられないこと、普通では考えられないことだ。

 でも若葉くんの声音から、冗談ではないことがわかる。


 彼の視力のよさ、細い腕からは考えられない剛力は、この目で見た。


 だから私は、必死になって理解しようとする。



「でも、一番厄介だったのはそんなものじゃなくて。狼の遺伝子に組み替わったDNAの人格とでも言うのかな。月を見ると気が昂るんだ。

 だから僕は月が嫌いだった。うかつに見てしまうと、僕が僕でなくなりそうだったから。

 ……正直言って今はかなりまずい。満月を見てしまったから、力の加減がわからない」



 ぎゅうっと万力のように抱き締めてくる腕は、ともすれば痛いくらいだった。

 これでも、彼は我慢してくれている。
 
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