夜空の琥珀
 
「僕の意思なんか関係なく、月を見ると気分が高揚する。

 今は平気でも、いつか獣のように見境がなくなったとき、誰かを傷つけてしまうんじゃないかと思うと怖かった。

 だから、言い出せなかった……」



 ……平坦で冷たい言葉。強い口調。


 屋上で若葉くんがミブロを拒絶したのは、自分に対する言葉だったんだ。


 傍にいるのに、抱えている秘密のせいで正体を明かせない。

 自分の中にある「自分ではないもの」が、傷つけてしまうかもしれないから。


 そのもどかしさが、彼にあんな言葉を言わせた。
 
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