夜空の琥珀
 
 若葉くんが、真顔になって押し黙る。

 やがて静かに腕を伸ばしてくると――むにっと、思いっきり私の頬をつねった。



「いたっ!」


「バカ。またそんなこと言って」


「なっ、私はバカじゃないもん!」


「それじゃあ、どうして自分のことはいいとか言うわけ?」


「自画自賛しないでしょ普通! 若葉くんは私を買いかぶりすぎだよ!」


「君は自分を卑下しすぎ」



 あっさり言い返され、口ごもってしまう。

 勝敗が決すると、手を離した若葉くんがやれやれと肩をすくめる。



(落胆したいのは、むしろ負けた私のほうなんですけど!)



 無言で訴えてみると、若葉くんはつーんとそっぽを向いた。
 
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