夜空の琥珀
 
(悪気が全っ然感じられないわ。いきなりつねってくるなんて信じられない。鬼だね、あの手は!)



 そう思ってはたと気づく。

 そうだ、手……。



「ねぇ若葉くん、聞いてもいい?」


「なに」


「もしかしてさっき、頭、撫でてくれてた?」



 そっぽを向いていた若葉くんが一瞬だけ黙って、ぽつり。



「君のご想像にお任せします」


「逃げたー!」


「何とでも言って! こっちはむなしさと罪悪感と理性の狭間で葛藤してたんだから!」



 わーっとまくし立てる若葉くんに、キョトン。

 無言で続きを促すと、若葉くんは眉間にシワを付け足し、ヒジョ―に不服そうな声で呟いた。
 
< 246 / 295 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop