夜空の琥珀
 
 完全な不意打ちに、若葉くんは大きくよろける。

 それでも何とか後ろに倒れ込むのは避けることができた。

 そんな彼にしがみついたまま、背中へ回した両腕にぎゅうっと力を込める。



「これは……新手の拷問?」



 戸惑う若葉くんの声に、してやったりと笑みを浮かべる私。


 思い出したの。彼が編入してきた朝のことと、満月の夜のこと。

 私が触れたり、抱きついたりすると、彼は少し焦っていたみたいだったから。

 理由はよくわからないけど、彼を困らせることができるなら、やるべき価値はおおいにあったんだ。

 だって、触れられて、優しい言葉をかけられて、私だけドキドキしてるなんて、不公平だもの。
 
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