夜空の琥珀
 
「だいじょうぶ?」


「え?」


「すごく……悲しそう」



 ――突然、何かが頬を伝った。



「何だ、これ」



 僕にはそれが何かわからなくて、なぜ視界がぼやけるのかもわからなかった。



「泣いてる。やなことがあったの?」


「……泣いてる?」



 言われて、やっと気づいた。

 この雫の正体が、涙であることに。



「……なんで、こんなもの……」



 人前で泣くのは初めて。

 動揺する理由は、それだけで充分だった。
 
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