夜空の琥珀
 
「でも、ここに残るわけにはいかないんです。僕はまだ弱い。こんな中途半端なままじゃ、セラちゃんの傍にいてあげられません」



 この衝動は、僕にとって脅威でしかなかった。

 だが防ぐ方法がないわけではない。

 僕はもっと強くなれる。



「……気持ちは、変わらないのね?」


「はい」



 今までの、弱い僕ではダメだ。

 この血を恐れ、人をも恐れていた僕のままではダメなんだ。

 彼女のために、強くならなくてはいけない。



「わかった。そこまで言うのなら、私が口出しすることは何もないわ。でも、ひとついいかしら」


「何ですか?」


「いい? どんな理由があっても、あの子が悲しむことは目に見えてる。あなたも充分わかってるはずだわ。

 可愛い1人娘を泣かされて黙っていられるほど、私は大人じゃないの。だから、責任を取ってちょうだい!」



 そう言って、ビシッと指を突きつけられる。

 小指を。
 
< 288 / 295 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop