夜空の琥珀
 
「行こう!」



 手首をガシッと掴まれ驚いた私を、若葉くんは半ば引きずるようにして歩き出す。


「若葉くん! 次の授業化学だよ! 化学室の場所、わかる!?」


「あ……」



 若葉くんが急に立ち止まった。

 自分の力で歩いているわけではなかった私は、操縦を失い静止し損ね……そのまま慣性の法則に従って、前へと倒れ込む。



「わっ!」


「紅林さんっ!」
 
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