夜空の琥珀
「迷ってるなら剣道部に入らない? 一緒に剣道しよう。きっと楽しいよ!」
ずずいっと身を乗り出す。
でも若葉くんが目を白黒させていることに気づいて、慌てて引っ込めた。
「いきなりごめん! 私考えるより先に声に出しちゃうの。気が進まないなら……」
「そういうわけじゃないんだ。紅林さんが嬉しそうだったから。
剣道、すごく好きなんだね。……うらやましいよ」
「……若葉くん?」
「部活は、当分考えてないんだ。僕自身やらなくちゃいけないことがあって、今はそれで手一杯だから」
「それって家のこととか?」
家族で東京に越してきて間もないというし、不馴れなことが多いんだろうなぁ、と思うのが自然だった。
若葉くんは明確にうなずきはしないものの、にっこりと笑う。