夜空の琥珀

お兄ちゃん

 
 ……それは、登校ラッシュの20分ほど前のことです。



「おはよう紅林さん。はい、日誌もらってきたよ」


「……ふぁいっ!?」



 日直の役目を思い出し、朝練を延期して職員室へ向かおうとしたら、教室の出入口で若葉くんと遭遇。



「ちょ、ちょっと待って。若葉くんはどうしてこんな早く学校に?」


「え? 僕も日直だからだよ?」


「はっ!?」



 間抜けな声に、レンズの奥にある黒目がパチパチと瞬く。



「そんなに驚くこと? 黒板に書いてあったよ。僕の見間違いでなければ」


「それはないかな!? ウチのクラスで若葉くんって1人しかいないから!」


「ははっ、そっか。なら間違いないなー」


「そうだよ。ハハハ」



 ……今日って若葉くんだったっけ?

 編入翌日に日直なんてアリ?

 別の人だった気がするのは私の思い違い?
 
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