夜空の琥珀
 
 私の目の前に、すっと何かが伸びてきて――私の両頬を、包み込んだ。

 あまりに突然のことで理解が追いつかない。


 ……若葉くんの手が、私の頬に触れている?



「だったら、僕が受け止める。『本当』の紅林さんを。もう辛い思いをしないで、顔が上げられるように」



 至近距離に若葉くんの顔が近づく。

 頭が真っ白になった。

 でも顔を固定されていて目が逸らせない。



「紅林さんが本当は芯の強い人だってこと、僕は知ってる。じゃなきゃ、辛いときに他人のことなんて考えられないよ。

 みんなは周りが見えなくなりすぎてるんだ。紅林さんの魅力に気づいてくれる人はきっといる。

 今は僕しかいないけど……僕にだってできることはあるはず」



 ――だから、何でも話してね?

 若葉くんの、そんな声が聞こえたような気がした。

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